先日、東京・上野にある国立科学博物館で開催されている特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」に行ってきました。

これがなかなか見応えがあって、想像していた以上におもしろかったのでざざーっと記録。

2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録された。そんな中、コロナ禍の2020年に予定していた展示が中止となり、今回あらためて開催になったのだそう。

美術館というよりやはり博物館というアプローチで、標本や図解、資料とともに科学や歴史などの視点から和食を紹介している。

展示は第一章「和食とは?」という問いかけからはじまる。

そう改めて聞かれると、和食たらしめている要素ってなんだろう?食材、技法、味……?どこまでが和食でどこからが洋食?

漠然としたイメージはあって極めて感覚的に答えはあるけれど、改めて聞かれると言葉で説明するのは難しい。

知っているようで知らない。それが和食。

第二章「列島が育む食材」では、水からはじまり、日本で育まれている食材に焦点を当てている。

キノコも、食べられるものから食べられないものまで、こんなにも種類があるのか!スーパーに並んでいるのなんてほんの一部なんだな。

野菜のパートでは、こんにゃくやダイコンは弥生時代から作られていたけど、オクラは明治時代からで意外と新しいんだなとか。和食といえば「野菜が多い」というイメージがあるけれど、実はほとんどが外国から持ち込まれた植物なんだそう。

25種の大根がずらりと並ぶ姿は圧巻。「出雲おろち大根」なんてこれ、どこを食べるのだろう?

魚も模型かと思って見ていたら、ほとんどが実物(!)と学芸員の方に教えてもらった。特殊な加工をして展示しているのだそう。

意外と見たことないな?と思ったのが海藻の標本。海藻を食用として食べる日本は世界的に見ても珍しいらしい。こうやって並ぶと海藻って美しい……。中央にあるのは海藻をモチーフに絵付けされたお皿。

個人的にもっとも楽しみにしていた「発酵」ゾーン。

第一子出産のときに便秘がひどくなったことと、できるだけシンプルに、素材由来の食材で調理してみたいと思ったとき出会ったのが甘酒、塩麹、しょうゆ麹などの発酵だった。そこからいくつかの発酵料理教室に通ったり、レシピ本も発酵に特化したものを持っていたり。塩麹としょうゆ麹も欠かさず作り続けるようになった。

発酵も腐敗も同じ微生物のはたらきなのに、発酵は人間にとって有用なものになる。酒、味噌、しょうゆと発酵食品は今や日本人の食卓には欠かせない。伝統調味料でありながら腸内環境を整えてくれる、日本が生み出したスーパーフード。

本当に、最初に「発酵」を見つけた人、すごい……その勇気の恩恵をわれわれは受けている。

第3章は「和食の成り立ち」。さまざまな時代の食を通して、和食の成り立ちをたどる。

「卑弥呼の食卓」では、炊き込みご飯、マダイの塩焼き、豚肉の煮物など現代の献立といってもおかしくないほどめっちゃ豪華……!

織田信長の饗応膳もあって、織田信長が安土城で徳川家康をもてなした時の膳が模型で再現されていた。昨年の大河「どうする家康」視聴勢としては、例のフナの刺身もあって「ご、御膳がひっくり返される〜」と勝手にドキドキしながら見てしまった。

大正時代の料理本も!材料が縦書きで新鮮。絵もかわいい、このシール欲しい……。食卓の背景に花柄をしくあたり、現代でいうスタイリングようなもの?細部まで工夫されてる。

江戸時代(だったかな?)の行楽弁当。何より、手前の三重にさ、刺身が入ってる!おいしそうだけど……少し心配になる。

雑煮MAPも盛り上がりますよね。関西あたりで丸餅と角餅の分岐ラインがある。鳥取、島根あたりの小豆汁文化圏も気になる!

第4章は「和食の真善美」。ここでは、和食で使う道具の展示と、技の映像が見られる。

ここまでで気づけばあっという間に2時間が経過。解説とインスタレーションとたっぷり、じっくり和食の世界に浸ってきました。

本展のキャッチコピー「知ると、もっとおいしい。」

そうそう。食もうつわも、商品も、そのものを見て直感でフィーリングが合うもの、いいと思うものを選ぶ。多くを語らず、もいいけれど、どうしたって、やはりその成り立ち、背景やストーリーが気になってきてしまう。

いま「ちば食べる通信」のコラムを書いていて、食材一つひとつを深掘りさせてもらう機会があるのだけど、どんなになじみのある野菜でもその歴史や背景は知らないことだらけ。

だから最近は、「いいよいいよ、話を聞かせるよ」と言ってくれるひと・もの・ことに”読者代表”のような気持ちでお話を聞かせてもらうことのできるライター業にとくに力を入れている。

やっぱり「知る」って、楽しい!

知る前と後では、世界の見え方が変わる。

これまで通ってきた料理教室もほとんどオーソドックスな家庭料理、発酵料理と、和食が中心だったのだけど、さらに和食の魅力が深掘りできて、今行けてよかった……!と思う展示だった。

「美」とか「季節感」とか、細部にまでわたる日本人の気づかいが感じられる和食。これからもおおらかに、和食を作ることも食べることも楽しんでいきたい。

ギリギリに滑り込んだので、本展は来週25日までと終了間近ですが、機会があらばぜひ!